SDSSについて
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スローン・ディジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)とは何か?

端的に言えば, SDSSは, これまでに行われた天文学上のどんなものより 野心的なサーベイプロジェクトです. このサーベイでは, 全天の4分の1に わたって1億個以上の天体の位置と明るさを測定して詳しい地図を作ります. さらに100万個の銀河とクエーサーに対しては距離も測ります. SDSSの 望遠鏡が設置されているアパッチポイント天文台は, アメリカの天体物理学 研究機構(ARC)によって運営されています.

SDSSは宇宙に関する魅力的でかつ本質的な疑問に答えようとするものです. このサーベイによって, 天文学者は宇宙にある銀河のシートやボイド(空洞) などの大規模構造のパターンを見ることができるでしょう. 科学者達は宇宙の進化 に関してさまざまな理論を考えていますが, 異なった理論はそれぞれ異なった宇宙の 大規模構造のパターンを予測するのです. SDSSはどの理論が正しいかを明らかに するでしょう. あるいはどの理論も正しくなくて, 全く新しい考えを導入しな ければならないことになるかもしれません.

宇宙の地図を作るということ

地図を作る, すなわち広い意味でとらえればある実在に対して検索の ための碁盤目盛りを敷くことは, 人類の知識の段階的な進歩にとって中心的 な役割を果たす活動です. この10年間に, 地図作りという事業はその規模と多様性 において爆発的な発展を遂げました. 遺伝学, 海洋学, 神経科学, 界面物理学 といった全く異なる学問分野において, 新しい複雑な研究領域を理解し記録する ためにコンピュータの力を用いて地図作りが行われました. 莫大な量のデータ を適切に即座に記録し消化するこのコンピュータの能力は, 科学の様相を変え つつあります. これまでで最も野心的な天文学上のサーベイ計画であるSDSSは, この包括的かつ定量的な地図作りという現代的手法を宇宙に適用し, 宇宙の地図 を作ってその中で私たちはどこにいるのかを明らかにするのです.

SDSSでは全天の4分の1を体系的に観測し, その詳細な画像を作って そこにある1億個以上の天体の位置と明るさを測定します. さらに, そのうち で近くにある100万個の銀河の距離を決定し, 現在探索されているよりも100倍 大きな空間の3次元の地図を作ります. またこのサーベイでは, 既知の天体の中 では最も遠方にあるクエーサーについても, 10万個の距離を測定し, 宇宙の果 てまでの物質分布に関してこれまでにない手がかりが得られます.

古代からの人類の記録には, 宇宙を探索する試みが多く残されています. SDSSは, 連綿と続く栄誉ある伝統としての空のサーベイの最新版です. このサーベイは, 従来の伝統的なサーベイを多くの点で一新するものです. 広域のサーベイとしては初めて電子的な光検出器を用いるので, 写真技術を 使った過去のサーベイよりも遙かに高感度で精度の高い画像を生み出します. このサーベイの結果は, 画像ばかりでなく検出された全ての天体の精密なカタログ もあわせて科学者のコミュニティに電子媒体で公開されます. このサーベイは 規模においても過去のサーベイを大きく凌駕します. 得られる情報の総量は 15テラバイト(1 テラバイトは10兆バイト)に達し, アメリカの国会図書館が 保有する総情報量に匹敵するのです.

これだけ広い空の領域を高感度で系統的に観測するために, SDSSは天文学の 非常に多くの研究分野に大きなインパクトを与えます. それらは, 宇宙の 大規模構造, 銀河の誕生と進化, 暗黒物質(ダークマター)と普通の物質の関係, わた したちの住む銀河系の構造, 太陽のような星々を作る原料となる星間物質の性質とその 分布など多岐にわたります. このサーベイは天文学の新しい基準データ, すなわちこの ミレニアム(千年紀)における宇宙のガイドマップを提供します. それは今後何十年にも わたって科学者に利用されるでしょう.

研究課題

洗剤の泡 今日の宇宙は, ほとんど何もない空間の中を多数の銀河からなる薄いシートが さまざまな模様を織りなしています. 台所の流しの中の洗剤の泡のように, それらのシートはくっつきあってフィラメントになったり, 内部に空洞(ボイド) を作ったりしています. 宇宙の起源に関するビッグバン理論によると, 誕生直後 の宇宙は一様で, きわめて高温の素粒子のスープで満たされていました. その時から現在までの間に何らかの方法で, 重力が物質を高密度の領域に引き寄せ, 残りの部分は物質のないボイドとなったのです. この「一様」から「構造」への変化 の引き金になったのは何でしょうか. 私たちが現在宇宙の中に見る構造の起源を 理解することは, 宇宙の歴史を再構成する上で決定的に重要な鍵です.

しかし, 私たちが見る星や銀河は宇宙にある全物質のごく一部であるという理由に よって, この探求はいっそう困難になります. 「暗黒物質(ダークマター)」の正体 は何か, どこにどれだけあるのかということは天文学における最も重要な問題の 一つです. 暗黒物質の重力は見えている構造にどのような影響を与えているの でしょうか. 銀河の運動を注意深く調べれば, 重力を及ぼしている全 ての物質(普通の物質と暗黒物質)の分布を知ることができます. その分布と 銀河(普通の物質)の分布を比べれば暗黒物質の手がかりが得られます.

SDSSの宇宙地図

宇宙全体を研究する時の困難の一つは, 大局的な描像を描くために必要なほど 十分な情報を集めるのが容易でないことです. SDSSは, 多様な天文学の問題を調 べるのに役立つほど大量かつ精度よいデータを集めるという, 直接的かつ野心的な 方法でこの困難を克服するように設計されています.

SDSSでは, 5つの異なった色(波長帯)で, 全天の4分の1の領域の高分解 能画像が得られます. これらの画像から先進的な画像処理ソフトウエアが, 星, 銀河, クエーサー(巨大なブラックホールに落ち込んで行く物質のエネルギー で輝くと考えられている稠密なきわめて明るい天体), およびその他のさまざまな 奇妙な天体を含む1億個もの天体の, 形状, 明るさ, および色を測定します. これらの中から選ばれた100万個の銀河と10万個のクエーサーは, 分光器と呼ばれ る装置を望遠鏡につけて観測され, 距離が決められると同時にそれら個々の天体 に関する豊富な情報が得られます. これらのデータから天文学のコミュニティが 最も必要としているもの, すなわち宇宙の一般的な性質を代表できるほど広くて 偏りのない空間の構成員の包括的なカタログ, が作られるのです.

SDSSは, 今日までに調べられた領域の約100倍大きな空間における物質の3次元分布を 描き出します. この地図は, 宇宙にはどのような構造があるのか, またその最大 スケールはどれだけかを明らかにするでしょう. それは一様であった「原初スープ」 を銀河からなる泡だらけのネットワークに変えていった機構を理解する助けと なるはずです.

星ぼし

宇宙の国勢調査

アメリカ統計調査局では, 合衆国に住む人の人口, 居住場所, 人種, 家庭の収入 などのさまざまな情報を収集します. この国勢調査はアメリカという国を理解 しようとする人にとって主要な情報源です. SDSSは宇宙の国勢調査であり, 宇宙には銀河やクエーサーが何個あるか, それらはどのように分布しているか, それぞれの個々の性質はどんなものか, どのくらい明るいかなどなどの情報を集 めるのです. このような情報は, たとえば, なぜ薄い渦巻銀河は膨らんだ楕円銀河 よりも密度の低いところに多く存在するのかとか, 謎に満ちたクエーサーは宇宙史の 中でどのように変貌を遂げたのかなどの疑問に答えるために天文学者によって 利用されます.

このサーベイではまた, 銀河系や私たちの太陽系についても情報収集が行われます. サーベイの望遠鏡によって投げられる広い網は, 銀河と同じくらい多くの星を, また 宇宙にあるクエーサーと同じくらい多くの太陽系中の小惑星をすくい上げるのです. これらの天体に関する知識は, 銀河系の中でどのように星が分布しているのか, 太陽系の歴史の中で小惑星がどのように位置づけられるかを研究する助けとな ります.

干し草の中の針, 霧の中の灯台

The spectrum of a rare "carbon star."
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希にしかない天体は, ほとんどその定義によって, 科学的に興味深い天体です. SDSSによって記録される1億個以上もの天体のカタログを調べることにより 科学者は, 最も遠いクエーサー, 最も希少な星, 最も奇妙な銀河などさまざまな 希少天体を見つけることができます. 干し草の山の中から針を見つけるようなも のです. SDSSのカタログ中にある最も希な天体は, 現在知られている最も希な 天体よりもほぼ100倍希なものでしょう. たとえば, 鉄などの金属含有量のきわめて 少ない星は銀河系中できわめて古い星です. したがってそれらは銀河系の誕生に ついて語ってくれます. しかしながらそれらはきわめて希なので, SDSSのような広領域 の深いサーベイだけが, 体系的な描像を描くために十分な数を見つけることができる のです.

クエーサーは非常に遠方にあるので, 宇宙にある銀河間物質を探る手段とな ります. 天文学者は, クエーサーから来る光のある特定の波長を, クエーサー と私たちの間の視線上にある銀河が遮る様子によってその銀河を同定し性質 を調べます. クエーサーを灯台にして途中の霧を調べるという手法です. SDSSでは この方法によって, 形成の初期過程にある何十万という数の銀河が検出されるで しょう. これらの銀河はまだとても暗く淡いので, それら自身が出す光は最大の 望遠鏡をもってしても検出できません. このような銀河のデータは, 宇宙史の 全期間にわたる宇宙の化学進化の研究を可能にするでしょう.

望遠鏡はタイムマシン

望遠鏡によって宇宙を見ることは, 空間的に遠くを見るばかりではなく, 時間的にも過去に遡ることを意味します. 30光年彼方にある星の周りの惑星系に 知的生命体が存在すると想像してみましょう. これらの生命体が地球から漏れ出た テレビ信号を受信すると仮定しよう. 彼らは地球上では30年前に起こったことを 見るでしょう. たとえば彼らは, シアーズタワー(シカゴにある世界で最も高い ビル)の基礎工事を報道するニュースを見るかもしれません. 私たちは今日完成 したタワーを見ていますが, 彼らは作業員が基礎にコンクリートを流し込んでいる のを見るでしょう. 私たちは光の速度をものすごく早いと思いますが, 宇宙は それにもまして広大なのです. 実際, 天文学者は, 光が届くまでに何十億年も かかるほどの距離にあるクエーサーを日常的に観測しています. 何十億光年の距離 にある銀河やクエーサーを見るとき, 私たちはそれらの何十億年昔の姿を見て いるのです.

さまざまな距離にある銀河やクエーサーを見ることによって, 天文学者は それらの性質が時間とともにどのように変わってきたかを知ることができます. ハッブル宇宙望遠鏡, ケック望遠鏡, すばる望遠鏡など新世代の望遠鏡は「きわめて 遠方の」銀河の性質を明らかにしつつあります. これに対してSDSSでは, 「近傍の」銀河を観測して両者の比較を可能にするのです. 一方, クエーサーは 非常に明るいので, SDSSでも宇宙の歴史の90パーセントまで遡ってその進化を調べる ことができます.

赤方偏移: 距離と時間を測る

ぶどうパン オーブンの中で焼けて膨らんでゆくぶどうパンが宇宙であると考えて見ましょう. 宇宙はぶどうパンと同じように膨張しています. 一つの干しぶどうに私たちがいる としましょう. パンが膨らむにつれて他の干しぶどうはどれもみな私たちの干し ぶどうから遠ざかって行きます. 私たちの干しぶどうから遠くにあるものほど速い速度で 遠ざかります. これと同様に, 宇宙が膨張するにつれて他の銀河は全て私たちの 銀河系から遠ざかって行くのです. そして宇宙は一様に膨張しているので, 銀河系から遠くにある銀河ほど速い速度で私たちから遠ざかっています.

これら遠方の天体から私たちに届く光は赤い方(波長の長い方)に波長が ずれています. これを赤方偏移と呼びます. これは, 遠ざかる列車や近づいて くる列車の汽笛が, ホームに止まっているときの汽笛に比べて低くなったり 高くなったりして聞こえるのと同じことです. 遠ざかる速度が速いほど, その天体からの光は大きく赤方偏移しています. 銀河のスペクトルからこの赤方偏移の量を測って天文学者はその銀河の距離を 推定するのです.

SDSSでは100万個の銀河の赤方偏移を測定して私たちの近傍宇宙の3次元地図を 作ります.

サーベイのスライス

早期データ公開

SDSSの早期データ公開で 公開されるデータは, 5つの波長帯の画像, 検出された全ての天体について の諸種の測光的な測定量, それとスペクトル, 赤方偏移, および分光的な測定量 からなっています. これらのデータは試験観測によって得られたものですが, データとその目盛り付け(キャリブレーション)の品質は, 多くの科学的な応用 に耐えうるものとなっています. 早期データ公開には, データベースを検索した り実際にデータにアクセスしたりするためのさまざまなインターフェイスが含 まれています.