セクションI 簡単なハッブル図私たちがどうやって宇宙の膨張を証明しているかを味わってもらうために、 そして天文学の研究にSkyServerを使う練習をしてもらうために、このページ ではたった6つの銀河で簡単なハッブル図を作るやり方が示されています。 距離ハッブル図を作る最初のステップは、銀河の距離をプロットすることです。 残念なことに、天文学では距離を測ることは非常に難しいのですが、幸いなこ とにハッブル図を書くために必要なのは銀河の相対的な距離であって、本当の、 つまりマイルや光年で測られる「絶対的な」距離は必要ありません。相対的な 距離は、アンドロメダ星雲やおとめ座銀河団のような便利で適当な基準に対し て測られます。例えば、ペルセウス座銀河団はおとめ座銀河団の5倍の距離に ある、のように言うわけです。 相対距離を測るには、銀河を比べる何らかの方法が必要です。銀河はとて もよく似ているので、明るさや大きさなどはみんな同じ平均の値であると仮定 します。2つの銀河の本当の明るさと大きさが同じだと仮定すると、その2つの 銀河の明るさや大きさの違いはすべて私たちからの距離が違うために生じてい ると考えられます。例えばある銀河に比べて2倍の大きさに見える銀河は、半 分の距離にあるのです。
銀河を比べる最も簡単な方法の1つは、その等級を比べることです。等級は 星や銀河を含むあらゆる天体の明るさを測るために使われます。等級では、大 きな数字が暗い天体に対応し、小さい数字が明るい天体に対応していて、非常 に明るい天体は負の等級を持っています。等級が1つ上がると、明るさは約 2.51倍になります。つまり4等の天体は5等の天体の2.51倍明るいのです。太陽 は-26等です。北天で最も明るい星であるシリウスは-1.5等です。最も明るい 銀河はアンドロメダ銀河で、等級は3.5等です。 人間が肉眼で見ることのできる最も暗い天体はだいたい6等です。SDSSの望 遠鏡で見ることのできる最も暗い天体はだいたい23等です。SDSSでは、紫外 (u)、青/緑(g)、赤(r)、そして近赤外で2つ(iとz)の5つの波長で等級が得られ ています。
もし6つの銀河がどれもだいたい同じ光の量を放射していると仮定すれば、 その等級の差は私たちからの距離の違いによるものです。もしある銀河が他よ り大きな等級だったら、それは遠くにあるに違いないと考えられます。 このプロジェクトの次のセクションでは、どうやって等級を相対距離に直 すかがわかります。でも今は簡単なハッブル図を作るには距離の代わりに等級 を使います。
赤方偏移赤方偏移は天体が私たちに比べてどれだけ速く動いているかを測る量です。 道に立っていて車や救急車がそばを通り過ぎた経験を思い出すと、赤方偏移と は何かを理解することができます。車が近づいてくるとき、サイレンの 音やエンジン音の高さは止まっている時より高くなります。車が遠ざかっていくと きは逆に低くなります。この変化は発見者であるオーストリアの物理学者、ク リスチャン・ドップラーの名をとってドップラー効果と呼ばれています。 車が近づいてくるとき、サイレンやエンジン音を伝えている音波が圧縮されます。 車が遠ざかるときは音波は引き伸ばされるのです。 同じ効果は光波の場合にも起こります。天体が私たちに近づいてく る場合、その天体が放射している光波は圧縮され、波長が短くなって光は青く なります。天体が私たちから遠ざかっている場合は、その光波は引き伸ばされ、 赤くなります。この「青方偏移」と「赤方偏移」の程度は、私たちが見ている 方向(視線方向)に沿った天体の速度に直接関係しています。下のアニメーション は車を例に青方偏移と赤方偏移がどのように見えるかを模式的に示したものです。実際 には車の速さは小さすぎて、私たちは赤方偏移や青方偏移に気が付きません。 しかし銀河は私たちに対して十分に速く動いているので、偏移を見ることがで きるのです。
天文学者はスペクトルを見ることによって、銀河がどれだけ赤方偏移や青方 偏移をしているのかを精確に測定することができます。スペクトルは天体がど れだけの光を放射しているかを波長の関数として表したものです。星や銀河の スペクトルにはたいてい、何らかの原子や分子が光を放射したり吸収したりす るときに形成される、何本ものスペクトル線が見えています。これらの「輝線」 や「吸収線」はいつも同じ波長に現れるので、赤方偏移や青方偏移の指標とし て便利です。銀河を見たとき、ある線が地球上での波長より長い波長にあった ら、その銀河は赤方偏移していて私たちから遠ざかっていることがわかります。 もしその線が短い波長にあれば、その銀河は青方偏移していて私たちに近づく ように動いているということがわかるのです。 サーベイの終了までに、SDSSは100万個以上の銀河のスペクトルを見ること になっています。それぞれのスペクトルはコンピューターのプログラムによって、 自動的に赤方偏移が決定されます。プログラムは下の図のようにスペクトルの線に 印をつけた画像を出力します。画像の下の方にある「z」の数字は赤方偏移を 表しています。正の z は赤方偏移を、負の z は青方偏移を示しています。
銀河のスペクトルはSDSSのスペクトルデータベースに蓄積されています。 それらはSDSSの分光器がスペクトルを観測した時に使ったプレートとファイバーに 対応した、プレート番号とファイバー番号でまとめられています。
図を作るさて、6つの銀河の等級と赤方偏移がわかったので、ハッブル図を作る準備 ができました。図を作るには、Microsoft Excelのようなグラフの描けるプロ グラムを使って下さい。以下の説明では、Excelでの図の作り方が書いてあり ます。他のグラフの描けるプログラムでも似たような手順に従います。
ここで使ったデータは等級と赤方偏移の直線関係を本当に示しているので しょうか?科学者はデータの関係を見つけようとするとき、よく「モデル」を 使います。この場合は直線モデルが等級と赤方偏移を関係付けます。科学者は また、よくデータとモデルを「フィット」させるということをします。フィッ トは、データ点がモデルが正しいとしたときにあるべき場所にどれくらい近い ところにあるかを表すパーセントで表現することができます。どんな実験でも 必ず誤差があり、どんな観測でも必ず統計的な誤差があるので、フィットは決 して100%正確にはなりません。一般的に科学者は、90%以上のフィットであれ ばモデルは正しくデータを予測していると考えています。
もう1つのハッブル図さて6つの銀河を含んだ簡単なハッブル図が出来上がりました。データは直 線でよくフィットされます。それでは別の銀河で同じ図を作ってみましょう。
課題6では、課題3と4で使ったのと同じ方法を使い、等級を赤方偏移の関数 としてグラフにしました。それではどうして2つのグラフはこんなに違うよう に見えるのでしょうか?答えは、この2つのグラフの背景にある仮定が、正し いときもあれば間違っているときもあるからです。ハッブル図を作るのに、等 級は距離の代わりになるということを仮定しましたが、それはすべての銀河が 同じ平均的な明るさを持っていると仮定することでした。 銀河は確かに平均的な性質があります。しかしもしすべての銀河が全く同 じだったら、天文学はとてもつまらない分野になっていたでしょう。銀河には たくさんの個性があり、多くの天文学者はこの個性を研究することを職業とし ているのです。残念なことに、銀河の性質の違いによって、単純に等級と赤方 偏移をグラフにしても、良いハッブル図はできないのです。 次のセクションでは、銀河までの相対的な距離を測る別の方法を学びます。 その次のセクションでは、赤方偏移をどうやって測るのかをもう少し詳しく学 びます。それからその知識を使って、この単純なハッブル図が陥ったわなにか からないような、もっとよいハッブル図を描きます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||